
志村けんさんが亡くなった。

あちこちで報道されているから、今更記事にする必要もないかも知れない。
それでも記事にしたかったのは、テレビなどで紹介されているのが彼のコントやお笑い、芝居についてのことばかりで、個人的に彼の好きな面についてのエピソードが殆ど皆無だったからだ。
メンバーになったザ・ドリフターズ自体が元々バンドだったこと、それもザ・ビートルズの武道館公演の前座を務めたほどだったこと。
確かに急に話が持ち上がってメンバーが満足出来るものではなかった内容だったようだが、そのグループから抜けた荒井注さんの後を埋める形で付き人から昇格した志村さんも、すごい音楽のセンス、嗅覚の持ち主だったことに触れられていない報道が多かったからだ。
自分たちの世代は「8時だヨ!全員集合」という公開録画番組で育った世代だが、彼と加藤茶さんがパントマイムのように一言も喋らずにサーカスの曲芸のようなチャレンジをする「ヒゲダンス」のコーナーに使われていたのはテディ・ペンダーグラスの「Do Me」という曲で、それを使いたいと言ったのは志村さんだという。 今の子たちは知らないだろうし、多分自分たちの世代でもこの原曲を知っている人は少ないと思う。 当時、志村さんはブラックミュージックにハマっていて、あのブンブンと腰に来るベースラインの、その後に来るディスコ・ブームを象徴する曲を聴いて気に入っていたそうだ。 個人的にも大好きである。
それに「ドリフの聖歌隊」・・・というと「東村山音頭」と大方の人は言うが、自分はボイスチェンジャーで甲高い声にしてゲストと順番に歌う、「ドリフの早口言葉」が好きだった。 あの曲にもウィルソン・ピケットの「Don't Knock My Love(Part1)」という原曲がある。 ’ダダッダダッ、ダダッダダッ、ダダッダダダダダダッダーン‘と繰り返すヘヴィなフレーズに対して地面や天井を指さして踊り、パーティーグッズのガスでも吸ったような甲高い声で早口言葉を言うあのギャップが堪らなく面白かったし、あの音楽が好きになった。
音楽・楽器の過渡期に育った自分たちの世代にとって、とても思い入れのある人がまた亡くなってしまった。

謹んでご冥福をお祈りします。
(-人-)